このコンテンツについて


道倶樂部は1993年、大阪大学体育会サイクリング部の部内班として誕生した。提唱者は部内きっての切れ者・S氏。氏以外の当時の構成員は不明であるが、S氏による矢の川峠、三太郎峠の旧道走行記録が機関紙「銀輪」1993年度版に掲載されている。これが「旧道倶樂部活動報告書」の嚆矢である。

 旧道倶樂部の存在を知り、そのストイックさと理不尽さに惚れ込んだ私は、自然消滅寸前であったその部内班を半ば勝手に引き継いだ。爾来、旧道倶楽部ウェアの作成やWebページによる広報活動、そしてもちろん実地調査も行ない、大学を離れてのちも旧道倶樂部員としての活動を続けている。本コンテンツはそんな活動の報告書集である。

 ただでさえしんどい峠なのに、目の前のトンネルを無いものとして旧道に向かう。あまつさえ余計に走り、登った挙げ句、自転車を担いで草ぼうぼうの廃道を進むこともしばしば・・・。はたから見れば、これほど奇特なサイクリングはないだろう。しかし、その「奇特さ」も含めて、私は旧道を走ることが好きなのである。もちろんその「好き」の中身は大部分が自己満足に他ならないだろうけれども、峠に登った、風景を見た、良かった、で完結することのないプラスαが、旧道にあることは間違いないのだ。

 具体例を挙げるならば、まず第一に「歴史」がある。旧道である以上、道が開かれ、そして廃れていった歴史が必ず存在する。その歴史は道端に建つ開通記念碑が教えてくれることもあり、詳しく語る書物が存在することもある。歴史を知ることは自分が汗水垂らして越えた道への思い入れと記憶を深くしてくれる、一種のエンドルフィンだ。そしてまた、かつて峠を越えていった人々に思いを馳せる糧にもなってくれる。峠に登って歴史を見ず、これほど空しいものはない。

 第二に「優越感」。道を塞ぐ倒木の先、草にまみれた峠、廃道の向こうに口を開ける不気味な隧道、普段は人が見ることもないその風景を自分の肉眼で見てくるということは、それだけで何者にも優る愉悦ではないか。あるいは車よりも遥かに非力な自転車が、車の行くことのできない先まで入って行き、登ることができるという事実。車が引き返す先にこそ、我々自転車の活躍の場があるのだ。

 それじゃあ何故自転車で越えることに拘るのだろう、普通の登山でよさそうなものを。そんな声も聞こえてきそうだが、わざわざ自転車を担いで行くにはちゃんとした利点がある。周知というか自明の理というか、峠には2つの側面がある。登りと下り、あるいは峠のこなたとあなたと言ってもいい。この2つを経験してこそ「峠越え」だというのは解ってもらえると思うが、もしこれを徒歩でやろうとするとよほどの困難と無駄があるのだ。歩いて峠に登り、反対側に下りてしまったら、さてどうやって帰ってくるか? 同じ道を引き返すか、回り道をして戻るか、また別の峠を越えて戻ってくるしかない。1番目の選択肢はツマラナイから置いておくとして、距離が短かったり隣の峠まで近ければ2番でもいいが、峠というものは得てしてそううまくはできていないのである。ここに自転車という「足」があれば、後者2択がより現実的になるばかりでなく、さらに別の峠へと行動範囲を広げることさえも可能になる。要約すれば、限られた時間の中でより多くの峠越えを楽しむために、自転車はベストな選択なのだ。

 ここで取り扱う旧道は、世間一般の定義からすれば少々狭隘なものであるかも知れない。○○古道や△△街道といった歴史的な道は現れず、むしろ近・現代土木遺産とでもいうべき道がほとんどを占める。これは自転車という道具を使っている以上「走ることのできる」道を探しての結果であると御了解願いたい(その割には廃道だとか山道だとかを担いでばかりなのだが。私だって、自転車で楽に越えられればそれに越したことはないのだ)。また、私の興味の対象が「峠」である関係上、旧道の中でも峰越えする箇所に限定して調査・報告を行なっている。麓の集落を抜ける旧道、ピークに至る道すがらのトンネルや陸橋でバイパスされた旧道についてはおざなりになっていることが多く、これについてはやや拘泥しすぎな感もしないでもない。とにかく基本は、「峰を越える」「旧道を自転車で走る」ことである。

 最後に、ここで用いる言葉の定義について触れておきたい。峰を越える道がある所へトンネルができた場合、多くはそのトンネルへ「○○峠」という峠の呼称が移ってしまうが、本報告所では一部の例外を除いてそれを行なわない。あくまでも峰越え道を「○○峠」と呼び、トンネルとは区別することにしている。峠の部分がバイパスされ、その結果「旧道」化した峠を本報告書では取り扱うことになる訳である。
 また、以前の峰越え道とは別の新しい道が鞍部を越える場合は、時間軸に従って「新○○峠」「旧○○峠」と呼び分けているが、これも報告者が便宜上呼び分けているに過ぎず、何らのコンセンサスをも持たないことも予め断っておこう。

Naga-JIS(nagajis@blue.ocn.ne.jp)


 

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